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4th Apr 2019 from TwitLonger

刑訴法短文⑧-3/ 変更の要否,可否,ほか (16ヶ)


略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。⇒ならば,∴なので(したがって,よって,ゆえに),∵なぜならば,⇔これに対し(て),orまたは,butしかし(もっとも),exたとえば。
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◇訴因変更の要否
刑訴法20/ 公判9/ 178/ 検察官による具体的な「罪となるべき事実」の主張が「訴因」であり、当該訴因事実が審判対象である(#刑訴法256条3項)。心証事実がそれと食い違えば、有罪判決できない(335条)。訴因変更手続(312条)を要することになる。それは、事実に重要なあるいは実質的な差異を生じた場合である。
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版159頁、寺崎嘉博『刑事訴訟法』3版318頁、『基本から合格答案を即効で書けるようになる本』刑事系162条、参照]

刑訴法21/ 公判10/ 179/ ①審判対象画定の見地から、罪となるべき事実の特定を欠かずとも、②認定事実が一般に、被告人の防御に重要な事項ならば、原則、#訴因変更手続 を要する。③ただ、防御の具体的状況等の審理経過に照らし、被告人への不意打ちとも、より不利益ともいえなければ、例外的に手続を経ずとも違法ではない。
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版159、160頁(最決平13・4・11刑集55-3-127)参照]

◇訴因変更の要否
[・①審判対象の範囲画定に関する事項を異なって認定するについては必ず訴因の変更が必要であり、②それ以外の被告人の防御に必要な事項についても、訴因として明示された以上これと異なった認定をするについては原則として訴因の変更が必要であるが、例外的に、被告人の防御の具体的状況に照らし被告人に不意打ちを与えるものではないなどの場合にはこれを必要としない。]

刑訴法73/ 695/ ①#審判対象の範囲画定に関する事項と異なった認定には必ず訴因変更要。②それ以外の被告人の防御に必要な事項も,争点顕在化のため,#訴因として明示された以上異なった認定に原則として訴因変更要だが,例外的に,被告人の防御の具体的状況に照らし被告人に不意打ちを与えるものでないなどの場合は不要。
[小林充『刑事訴訟法』新訂版(2009年4月)139頁(最決平13・4・11刑集55-3-127),141頁L15(最判昭58・12・13刑集37-10-1581),参照]

◇訴因変更の要否
[・訴因が審判対象であり(訴因対象説)、訴因は罪となるべき事実の記載である(事実記載説)とすれば、訴因事実と心証事実の間に事実の食い違いがあれば、訴因変更手続を要するとも考えられるが、僅かな食い違いでも常に訴因変更手続を経なければならないとすると煩瑣に堪えないので、訴因の機能を害さない限り、訴因変更手続を経ずに心証事実の認定を許すべきである。そこで、事実に重要なあるいは実質的な差異が生じた場合に訴因変更が必要である解されている。]

刑訴法79/ 702/ 訴因が審判対象で,訴因は罪となるべき事実の記載とすれば,訴因事実と心証事実に事実の食い違いあれば,訴因変更手続要とも言えるが,僅かな食い違いでも常に手続を要求すると煩瑣に堪えないので,訴因機能を害さない限り,手続を要せず,#事実に重要なあるいは実質的な差異が生じた場合に訴因変更手続要求。
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版159頁参照]

◇訴因変更の要否
[・では、重要なまたは実質的な事実の食い違いにあたるのはどういう場合か。
 訴因の機能は、①審判対象の画定と、②被告人の防御範囲の限定であり、①の見地から、訴因の記載として罪となるべき事実の特定に不可欠とはいえない事実については、明示されていない場合および、明示されていても、訴因変更手続は不要である(平成13年決定の第1段階の判断枠組み)。
 これに対し、検察官が訴因において明示した、罪となるべき事実の特定に不可欠な事実については、②被告人の防御範囲の限定の見地から、それが一般的・抽象的にみて被告人の防御にとって重要な事項であるときは、原則として訴因変更手続を要する(抽象的防御説)。
 もっとも、訴因の機能からの考慮とは別に、争点明確化による不意打ち防止の要請の観点から、訴因において明示された罪となるべき事実の特定に不可欠の事実についても、被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではないと認められ、かつ、被告人にとってより不利益であるとはいえない場合には、例外的に、訴因変更手続を経ることなく心証事実の認定をすることも違法ではない(平成13年決定の第2段階の判断枠組みの後半部分)。]

刑訴法80,81/ 703,704/ ①#審判対象画定の見地から,訴因の記載として罪となるべき事実の特定に不可欠でない事実は,明示の有無に関わらず,重要な・実質的な事実の食い違いとはいえない。明示された_罪となるべき事実の特定に不可欠な事実は,②#被告人の防御範囲限定の見地から_一般的・抽象的に重要なら,原則,訴因変更手続要。
[①平成13年決定の第1段階の判断枠組み。②第2段階の判断枠組みの前半部分(抽象的防御説)]

/ #争点明確化による不意打ち防止の要請から,訴因で明示された罪となるべき事実の特定に不可欠の事実も,#被告人の防御の具体的な状況等の審理の経過に照らし_被告人に不意打ちを与えるものではなく_被告人にとってより不利益であるとはいえない場合,例外的に,訴因変更手続を経ることなく心証事実認定可。
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版(2011年2月)160頁(最決平13・4・11刑集55-3-127)参照。平成13年決定の第2段階の判断枠組みの後半部分]

◇過失の態様について
[・自動車事故における業務上過失致死傷事件について、例えば、前方不注視義務違反で人を殺傷したとの訴因で、一時停止義務違反の事実を認定してよいか。
 過失犯は未完結の構成要件であり、それを補充する個々の注意義務違反は、故意犯であれば行為内容(行為態様)にも値する重要性をもつから、過失の態様の変動は、原則として訴因変更を必要とすると解すべきである。
 判例にも、発進の際のクラッチペダルの踏みはずしによる過失を、停止の際のブレーキ操作の遅延という過失と認定するには、訴因変更が必要だとしたものがある(最判昭46・6・22)。]

刑訴法85/ 708/ 自動車事故の業務上過失致死傷事件で,前方不注視義務違反で殺傷したとの訴因で一時停止義務違反事実を認定できるか。
過失犯は未完結の構成要件であり,それを補充する個々の注意義務違反は,故意犯であれば行為内容(#行為態様)にも値する重要性をもつから,#過失態様の変動は原則_訴因変更要と解すべき。
[森圭司『ベーシック・ノート刑事訴訟法』新訂版(2006年)176頁(最判昭46・6・22)参照]

◇共同正犯の実行行為者は,訴因記載に不可欠か,訴因変更の要否
刑訴法114/ 1007/ 審判対象画定の見地からは,実行行為者明示は不可欠でなく,訴因と異なる認定でも訴因変更不要。⇔被告人の防御権保障の見地からは,実行行為者が誰かは一般的に重要なので,変更が原則。but,不可欠な記載事項ではないので,#具体的審理過程に照らし_被告人に不意打ちとならず_不利益といえない⇒変更不要。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版241頁-242頁(最決平13・4・11)参照]

◇単独犯として起訴されたが,共謀共同正犯者が存在した場合の訴因変更の要否
刑訴法113/ 1006/ 単独犯として起訴されたが共謀共同正犯者が存在する場合の訴因変更の要否?/当該被告人の行為により犯罪構成要件の全てがみたされると認められるときは,訴因変更不要。∵#共謀共同正犯者が存在するとしても犯罪の成否は左右されないから共犯者の存在は訴因の特定のために必要な事実の変動にあたらない。
[辰巳『趣旨・規範ハンドブック 刑事系』5版242頁(最決平21・7・21)参照]

◇縮小認定と訴因変更の要否
[・強盗の起訴に対して恐喝を認定する場合のごとく、裁判所がその態様および限度において訴因たる事実よりもいわば縮小された事実を認定するについては、あえて訴因罰条の変更手続を経る必要がない(縮小認定の理論)。
 検察官の設定した訴因事実が裁判所の認定事実を包摂する関係(包摂・被包摂関係、大小関係)にある場合だから、認定される縮小犯罪事実は、当初から検察官により黙示的・予備的に併せ主張されていた犯罪事実と考えることができるので、縮小認定はそもそも訴因の記載と異なる事実認定の問題ではなく、訴因の記載どおりの認定の一態様であるといえるからである。それは、平成13年決定の第1段階の判断枠組みの例外ではなく、その埒外といっていい。]

刑訴法82/ 705/ 強盗の起訴に対し恐喝を認定するごとく,裁判所が犯罪事実の態様・限度で訴因事実よりも縮小認定するのに,訴因罰条の変更手続不要。#訴因事実が認定事実を包摂する関係にあり_縮小犯罪事実は_当初から検察官が黙示的・予備的に併せ主張していたといえ,そもそも訴因の記載と異なる事実認定ではないから。
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版162頁,163頁(最判昭26・6・15刑集5-7-1277,最決平13・4・11刑集55-3-127)参照]

◇「共謀の上」実行したという訴因事実で、幇助事実を縮小認定できるか
[・共謀事実も幇助事実も訴因の特定にとって不可欠な事実であり、両者の違いは構成要件を異にするもので(共謀共同正犯(刑法60条)、幇助犯(同62条))、実質的な食い違いということができ(裸の事実としては極めて僅かな事実の食い違いでも、それが構成要件的評価を変えさせるようのものであるときは、重要な食い違いといえる)、本来であれば、審判対象の画定の見地から訴因変更手続を要するはずものだが、共同正犯事実と幇助事実とは、包摂・被包摂の関係にあるので、食い違いがあるとはいえず、縮小認定が許される場合であって、訴因変更手続を経ることなく幇助事実を認定できる(最判昭29・1・21刑集8-1-71,東京地判平2・3・19判タ729-231,浦和地判平3・3・25判タ760-261)。そしてまた、被告人が幇助に過ぎないと弁解している場合には、被告人の弁解通りに認定するのだから、争点明確化による不意打ち防止の措置も不要である。
 もっとも、幇助犯の訴因には、幇助にあたる具体的事実の記載が必要とされているので(最決昭33・3・27刑集12-4-697)、「共謀の上」との事実が、考えられるあらゆる幇助の態様を予備的、黙示的に主張しているとみることは、訴因のいずれの機能との関係でも問題を孕み、妥当とは思われず、この場合には縮小認定を認めることは妥当でないと考える。]

刑訴法83,84/ 706,707/ 共謀事実も幇助事実も訴因特定に不可欠で,(裸の事実として極めて僅かな事実の差異だとしても,)両者の違いは構成要件的評価が異なる点では(共謀共同正犯,幇助犯),実質的な食い違いといえるが,#共同正犯事実と幇助事実は包摂関係にあることから,結局食い違い認められず,訴因変更手続を経ずに縮小認定可。
[最判昭29・1・21刑集8-1-71,東京地判平2・3・19判タ729-231,浦和地判平3・3・25判タ760-261,参照]

/ 共謀共同正犯の訴因に,被告人が幇助と弁解した場合,弁解通りの認定なので,争点明確化による不意打ち防止不要(実務)。
もっとも,#幇助犯の訴因には幇助にあたる具体的事実記載を要し,「共謀の上」との訴因事実だけで,考えられるあらゆる幇助態様の予備的,黙示的主張とみるのは,訴因機能との関係で問題。
[古江賴隆『事例演習刑事訴訟法』初版164頁,165頁参照(最決昭33・3・27刑集12-4-697)参照]

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◇訴因変更の可否
[・訴因変更制度は、一個の訴訟手続の中で解決を図るべき範囲の問題である。すなわち、1個の刑罰権に関し2個以上の訴因が構成されて、それらが別訴で審判されることとなると、二重処罰の危険性が生じるので、それを回避するために、1個の刑罰権に関わる2個以上の訴因について別訴そのものを許さない方策に関する問題である。
 そうすると、訴因事実と訴因事実とを比較し、両訴因の『事実の共通性』を前提にして、両訴因が別訴で共に有罪とされるとしたら二重処罰となる関係(その意味における『非両立関係』、二重処罰は許されない関係)にあるときに、これを回避するために別訴を許さず訴因変更によるべき、一個の訴訟手続の中で解決を図るべきといえる。この場合に、「公訴事実の同一性」が認められる。]

刑訴法44/ 402/ 訴因事実と訴因事実を比較し、#事実の共通性を前提に、両訴因が別訴で共に有罪になるとしたら二重処罰関係(それが許されない関係、#非両立関係)であり、これを回避するため別訴を許さず訴因変更により、一個の訴訟手続内で解決されるべきとき、「公訴事実の同一性」(刑訴法312条1項)が認められる。
[古江『事例演習 刑事訴訟法』初版175頁~177頁参照。私のまとめがあっているかどうか自信がありません。参考:大澤・酒巻説(同書175頁L13あたり)]

刑訴法18/ 公判7/ 135/ 「Xは公務員Yと共謀し、Yの職務上の不正行為への謝礼の趣旨でWから賄賂収受」という加重収賄の訴因と「XはWと共謀し、同趣旨でYに賄賂供与」という贈賄の訴因とは、賄賂が事実上共通であれば、両立せず、一連の同一事象への法的評価が違うに過ぎず、基本的事実関係が同一であるといえる。#公判
[最決平53・3・6刑集32-2-218『刑事訴訟法判例百選』9版〔47〕参照]

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◇公訴提起後の手続など
刑訴法35/ 公判17/ 338/ 公訴提起後、弁護士は、裁判所で書類・証拠物の閲覧・謄写ができる(#刑訴法40条1項)。また、当事者双方は、#証拠調べ請求証拠について、あらかじめ相手方に、証人などの氏名・住所を知る機会、証拠書類などを閲覧する機会を与えねばならない(#299条1項、#規則178条の6第1項1号)。
[寺崎『刑事訴訟法』3版262頁参照]

刑訴法36/ 公判18/ 339/ 検察官側は、①弁護人による罪証隠滅、証人威迫等の危険、②他事件の捜査上の秘密が含まれ、公にできない、③関係者の名誉・安全を守るため、などの理由で #事前の全面開示 を拒否。弁護人側は、④捜査機関収集証拠の全体像を把握し防御方針決定が必要、⑥被告人に有利な証拠もあるはず、など主張。
[寺崎『刑事訴訟法』3版262頁、263頁参照]

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