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原稿 · @right_droit4

24th Aug 2019 from TwitLonger

社会的法益に対する罪 (9ヶ)


略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。orまたは,∴なので,⇒ならば,∵なぜならば,⇔これに対し。TB構成要件,Rw違法性(違法),S責任(有責性)
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◇人の現住性・現在性(刑法108条)
[・刑法108条の客体である建造物等は、現に人が住居に使用するもの(現住建造物等)か、現に人が存在するもの(現在建造物等)であることを要する。後者については、人の現在性によって、現住建造物等放火罪の重罰根拠をなす、建造物等の内部に現在する人に対する危険を認めることが可能となる。これに対し、前者については、人の現在性は不要であるから、危険惹起の対象は、建造物内部に存在する可能性のある人にまで、「住居」と限定することにより拡張されている。]

刑法90/ 788/ 刑法108条の建造物等:現に人が住居に使用する(現住建造物等)か,現に人がいる(現在建造物等)こと要。後者:人の現在性により,108条の重罰根拠たる,建造物等の内部に現在する人に対する危険把握。前者:人の現在性は不要。危険惹起の対象は,#建造物内部に存在する可能性ある人にまで「住居」と限定し拡張。
[山口『刑法各論』2版378頁参照。参考:R22旧①,こちらは,109条1項の非現住建造物放火罪の成否が問題となるようである。] 

◇放火罪における現住性
最判平9・10・21刑集51-9-755
1.問題の所在
 Xは、本件の家屋に従業員を宿泊させていたが、従業員を沖縄旅行に連れ出し、留守番役の従業員にも旅行中宿泊は不要と指示した上で、同家屋に放火しており、刑法(以下、略)108条の要件たる現住性をみたすか問題となる。
2.法的判断枠組み
 108条の「現に人が住居に使用」(現住性)とは、現に人の起臥寝食の場所として日常使用されていることをいい、昼夜間断なく人が現在することを要しない。数日起臥寝食がなされないとしても、家屋の使用形態に変更なく、不在者において以後も起臥寝食の場所として日常使用することが認識されていた場合には、現住性は失われないと解する。
3.事実の拾い出し・評価
 本件においては、Xは従業員に旅行後の宿泊は不要であると指示しておらず、鍵も回収していなかったこと、また、従業員は旅行後も宿泊が継続されると認識していたことから、家屋の使用形態に変更はないといえる。
4.結論
 本件の家屋の使用形態に変更はなく、現住性要件をみたす。
[『判例プラクティス刑法Ⅱ』〔426〕参照。齋藤彰子先生は、『居住意思』の有無が「家屋の使用形態」の継続の判断において重要な意味をもつと考えられているようである。]

刑法91/ 789/ 「現に人が住居に使用」(刑法108条,現住性):現に人の起臥寝食の場所として日常使用されていること,昼夜間断ない人の現在は不要。数日起臥寝食がされないとしても,#不在者が以後も起臥寝食の場所として日常使用することを認識していたなど居住意思ある場合_家屋の使用形態に変更なく,現住性失われない。
[『判例プラクティス刑法Ⅱ』〔426〕(最判平9・10・21刑集51-9-755)判旨および解説参照]

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◇「公共の危険」の意義
刑法106/ 842/ 公共の危険(刑法109条2項,110条)は,108条,109条1項の建造物等に対する延焼の危険に限られず,#不特定or多数人の生命_身体or前記建造物等以外の財産に対する危険も含む。火災現場に人が集まれば,公共の危険が発生するというものではなく,#燃え広がりの危険による,他人の財産等に対する延焼の危険である。
[山口『刑法各論』2版388頁-389頁(最決平15・4・14刑集57-4-445)参照。参考:『刑法事例演習教材』(2009年)67頁〔14〕「燃え移った炎」]

◇公共の危険の認識
刑法107/ 843/ 判例は,公共の危険の認識,不要とする。しかし,自己所有物を焼損すること自体に何らの法益侵害もなく,#刑法109条2項の放火罪は公共の危険の発生により初めて法益侵害性・違法性が認められるのだから_責任主義_故意犯処罰の原則から_認識を当然要求すべき。108条,109条1項の放火罪の故意とも区別しうる。
[山口『刑法各論』2版389頁-390頁(大判昭6・7・2刑集10-303,最判昭60・3・28刑集39-2-75)参照。R40②(放火罪と公共の危険)]

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◇電磁的記録不正作出罪,同供用罪について
刑法36/ 311/ 私電磁的記録不正作出罪(刑法161条の2第1項)は、#人の事務処理を誤らせる目的で_事務処理の用に供する権利・義務_事実証明に関する電磁的記録を不正に作った場合。公電磁的記録不正作出罪(同条2項)は、公務所・公務員により作られるべきとき、それらの供用罪は未遂も罰する(3項4項)。
[山口『刑法各論』2版473頁参照]

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◇偽造有価証券行使等罪の「行使」の意義など
刑法48/ 631/ 偽造有価証券行使等罪の構成要件的行為:①偽造有価証券等の行使,②行使目的での(人への)交付,③行使目的での輸入。行使は,偽造有価証券等を,真正な・内容真実の有価証券として使用すること,通貨と異なり,#流通に置くこと要せず。#人に対し偽造有価証券等を呈示要,機器への挿入では足りないと解すべき。
[山口『刑法各論』2版485頁(大判明44・3・31刑録17-482,大判昭7・5・5刑集11-578。山口「テレホンカードと有価証券変造」ジュリ951号54頁以下⇔変造テレホンカードをカード式公衆電話機で使用する行為を行使にあたるとする最決平3・4・5刑集45-4-171),T30(4②),参照]

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◇わいせつ物頒布等罪
[・わいせつ物頒布等罪(刑法175条1項2項)の構成要件的行為は、①頒布、②公然陳列、③有償頒布目的所持である。]
[・「頒布」とは、#有償・無償を問わず、不特定または多数の人に対する、対象物の交付である。わいせつ物が現実に交付されてたことが必要である。
 頒布の相手方となる行為については、当然予想される対向行為の一方について処罰規定が存在しない。これは、わいせつ物を積極的に伝搬する行為は当罰的な違法性を備えているが、その相手方として伝播を可能にするにとどまる行為については当罰性が低いと考えられるからである。このような理由から、刑法総則の共犯としても処罰することはできないと解する(処罰根拠の不存在から安易に立法者意思を一人歩きさせ、決めつけるべきでなく、当罰性の低いという実質的な理由の援用は不可欠)。]

刑法160/ 948/ わいせつ物頒布等罪(刑法175条1項2項)のTB的行為は,頒布,公然陳列,有償頒布目的所持。頒布とは,#有償_無償を問わず,不特定または多数人に対する対象物の交付。現実の交付要。頒布相手方の行為は,当然予想される対向行為だが,処罰規定ない。相手方として関わるにすぎない行為は当罰性低いとの考慮から。
[山口『刑法各論』2版510頁-511頁参照]

◇顧客によるダウンロード操作に応じた自動的なデータの送信と「頒布」
[・刑法175条1項後段にいう「頒布」とは、不特定または多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめることをいう。
 本件事実関係によれば、Xらが運営する配信サイトには、インターネットを介したダウンロード操作に応じて自動的にデータを送信する機能が備え付けられていたのであって、顧客による操作はXらが意図していた送信の契機となるものにすぎず、Xらは、これに応じてサーバーコンピュータから顧客のパーソナルコンピュータへデータを送信したというべきである。したがって、同条項後段の「頒布」にあたる。]

刑法161/ 949/ 「頒布」(刑法175条1項後段)は,不特定or多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他記録を存在するに至らしめること。
Xら運営配信サイトは,インターネットを介しダウンロード操作で自動的にデータ送信する機能あり,#顧客による操作は送信の契機にすぎず,Xらは,これに応じデータ送信しており,頒布に該当。
[最決平26・11・25刑集68-9-1053『27年度 重要判例解説』〔刑法7〕参照]

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◇児童ポルノ法の保護する個々の児童の具体的権利(個人的法益)と,児童一般の保護(社会的法益)について
刑法135/ 874/ 児童ポルノ法が保護法益とする児童の権利は,#児童の実在性要という意味で具体性を要するが,児童一般の保護という社会的法益と排斥し合うものでない。#現に児童の権利の侵害行為のみならず_児童を性欲の対象としてとらえる社会的風潮の広がりを防ぎ_将来にわたる児童の性的搾取・虐待の防止要請される。
[東京高判平29・1・24高刑集70-1-1『平成29年度 重要判例解説』〔刑法9〕参照]

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