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原稿 · @right_droit4

29th Aug 2019 from TwitLonger

設立(5ヶ)


略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。orまたは,∴なので,⇒ならば,∵なぜならば,⇔これに対し
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◇設立費用
[・定款には設立費用の額として70万円と記載されているのに、発起人が会社のためにAとの間で40万円を支出する契約とBとの間で60万円を支出する契約とを締結しているときの法律関係はどうなるか。
 この場合の法律関係は、行為の時系列によって効果が帰属するか否かが区別される。すなわち、Aとの取引が先に締結されたとすれば、成立後の会社はAには40万円を、Bには30万円を負担する。Bは残額の30万円を発起人等に対して請求するしかない。A、Bのいずれの取引が先になされたかが不明な場合には、A、Bは、債務の額に応じて按分した範囲で会社に請求できる。]

商法75/ 427/ 定款の設立費用額が70万円なのに,発起人が会社のためAへの40万円支出契約,Bへの60万円支出契約を締結しているとき,法律関係如何。#行為の時系列により効果帰属が決まる。A取引が先なら,会社はAに40万円,Bに30万円負担。Bの残額は発起人等の責任。いずれが先か不明なら債務額に応じ按分し会社に請求可。
[『LEGAL QUEST会社法』3版51頁,R29②Q1(1)参照]

◇財産引受けについて
[・株式会社において、発起人が会社の設立を条件として、成立後の会社のために営業用の財産を譲り受ける行為を、財産引受けという(会社法28条2号)。開業準備行為ともいう。財産の過大評価により資本の充実・維持を害する危険があるので、厳格に規制されている(28条、33条参照)。
 まず、定款に記載されていなければ効力を生じない(28条柱書)。また、原則、検査役の調査(33条1項~6項)、または、価額の相当性につき弁護士等の証明(33条10項3号)を受ける必要がある。]

商法76/ 428/ 発起人が会社設立を条件に,成立後の会社のため営業用財産を譲り受ける行為を,#財産引受け(開業準備行為)という(会社法28条2号)。財産の過大評価で資本充実・維持を害する危険があるので,#定款に記載なければ無効(28条柱書)。また,原則,検査役の調査(33条1項~6項),または弁護士等の証明(33条10項),要。
[有斐閣『法律学小事典』4版430頁,304頁,『LEGAL QUEST会社法』3版51頁,R29②Q1(2)参照]

◇設立中の会社の発起人の権限
[・設立中の会社の発起人の権限は何か。発起人の権限内の行為は、設立後の会社に責任が及ぶので、問題となる。
 設立中の会社は、会社の設立を目的とするので、設立に直接必要な行為のみならず、設立のために事実上必要な行為もなしうる。したがって、その発起人の権限も設立に直接および事実上必要な行為に及ぶ。言い換えれば、#発起人の権限は会社設立のために法律上・経済上必要な行為にまで及ぶといえる。
 もっとも、会社設立のために事実上・経済上必要な行為すべてについて発起人の権限を認めてしまうと、設立後の会社の資本の充実・維持を害されるおそれがある。そこで、事実上・経済上必要な行為については、定款に記載がある範囲内でのみ、発起人の権限を認めるべきである(会社法28条参照)。]

商法77/ 429/ 発起人の権限内の行為は,設立後の会社に及ぶ。設立中の会社は,設立を目的とするので,設立に直接必要な行為および事実上必要な行為もなしうる。したがって,発起人の権限も設立に直接・事実(#経済)上必要な行為に及ぶ。しかし,資本充実維持のため,#法律・定款の範囲で権限が認められる(会社法28条参照)。
[『工藤北斗の合格論証集』民法,商法・民事訴訟法21頁以下,会社法『判例百選』2版15頁タテ2,参照]

◇発起人の行為の効果が会社に及ばない場合の発起人の責任
[・発起人の行為の効果が成立後の会社に及ばない場合、発起人が責任を負う。民法117条1項が類推適用される(改正民法の文言は少し変更されている)。同条項は本来、追認があれば遡って有効となる場合の規定である。本人たる会社がまだ成立していない場合は、同条項の類推適用である。
 また、発起人が明示的に会社成立を条件として開業準備行為をしたにもかかわらず、定款に記載しなかった場合、同117条2項に該当しない。なぜなら、発起人が、当該取引の後に、定款に記載することを怠ったのであり、取引時において相手方が「過失によって知らなかった」(同条項)ときとはいえないからである。したがって、同117条1項の類推適用により、相手方は発起人に、履行または損害賠償請求できる。]

商法78/ 430/ 発起人の行為の効果が成立後の会社に及ばない場合,発起人は,#民法117条1項の類推適用により,責任を負う。発起人が明示的に会社成立を条件として開業準備行為をしたにかかわらず,取引後に,#定款記載を怠った場合,取引時に相手方が「過失によって知らなかった」とはいえないので,同条2項にはあたらない。
[会社法『判例百選』2版15頁タテ2,R29②Q1(2),参照。後半は,29年度民事系第2問設問1(2)では問われてはいないが,その事案について自分で考えてみたものです。]

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◇見せ金
[・見せ金とは、発起人が払込取扱機以外の者から借り入れた金を払込みに充てて会社を設立した上、会社の成立後それを引き出して借入金の返還に充てる行為をいう。
 このような見せ金を全体としてみると、個々行為は仮装払込みのためのカラクリの一環をなしているに過ぎないので、無効と解すべきである。
 ただし、見せ金による払込みと適法な払込みとの区別は慎重に判断されるべきであり、具体的には、①借入金を返済するまでの期間の長短、②会社資金としての運用の事実、③借入金の返済と会社の資金関係との関係などの事情をもって総合判断すべきである。]

商法95/ 556/ 見せ金は,#発起人が払込取扱期間以外から借入し払い込み_会社設立_会社成立後引き出し借入金返還に充てる行為。個々の行為も,全体としては,仮装払込みのカラクリの一環なので,無効。適法行為との区別は,①借入金返済までの期間長短,②会社資金としての運用事実,③返済と会社資金との関係など総合判断。
[工藤『合格論証集 商法 民事訴訟法』19頁-20頁参照]

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