2019年9月(1日-28日分)ツイート16:その他(民法1,商法1,倒産法5;刑法9)


2019年9月28日(その他5)
◇破産債権の意義
倒産法81/ 1111/ 破産債権となるのは,①破産者に対し,②#破産手続開始前の原因に基づいて生じた,③財産上の請求権であって,④執行可能性を備え,⑤財団債権に該当しないもの(破2条5項参照)。②固定主義。#主たる原因が破産手続開始前にあればよい(例外:97条)。③不作為含まないが,損害賠償請求権となっている場合,該当。
[山本ほか『倒産法概説』2版55頁-57頁参照]

◇委託を受けない保証人の事後求償権は,破産債権たりうるか
82/ 1112/ 委託を受けない保証人にも求償権があるが(民462条),法的性格は事務管理や不当利得ととらえられるため,求償権発生の主要「原因」(破2条5項)につき議論の余地あり。but,委託を受けない保証人の事後求償権も,#保証契約に基づき弁済等を停止条件として発生する構造に変わりはなく,破産債権となる(裁判例)。
[山本ほか『倒産法概説』2版57頁参照]

◇労働債権
倒産法79/ 1109/ #破産手続開始前3か月間に発生した未払分の給料請求権(破149条1項)等は,労働者の生活保障のため,財団債権とされる。労働の対価として使用者が労働者に払うすべてのものをいい,名称の如何を問わない。それら以外の破産手続開始前の原因に基づき生じた労働債権は,利息等を除き,優先的破産債権(98条1項)。
[山本ほか『倒産法概説』2版104頁参照]

◇破産手続開始後の労働債権
80/ 1110/ 破産手続開始後の労務提供の対価たる労働債権は,#財団債権。破産手続が開始されると事業等の継続は前提でないため,いったんそれまでの雇用関係を解消し,新たに必要な範囲で破産管財人が雇用契約を締結するのが一般。#雇用関係終了までの分は破148条1項8号により_新たな雇用関係に基づく分は4号による。
[山本ほか『倒産法概説』2版105頁参照]

◇取戻権の意義
倒産法78/ 1108/ 破産手続開始によって影響を受けない,#破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利を取戻権という(破62条)。破産財団は,一般に,破産管財人に管理処分権の専属する財産とされるが(2条14項,法定財団),それとは別に現実に破産管財人の支配下に置かれている財産を総称することがある(現有財団,62条)。
[山本ほか『倒産法概説』2版177頁参照]


2019年9月27日(その他2)
◇作成名義人・作成者をいかに確定するか(帰属説)
刑法227/ 1107/ 文書は意思・観念の表示の証拠。#文書として表示された意思・観念が帰属する主体(表示した者)が作成者であり,法的効果の帰属主体と区別すべき。いいかえれば,有形偽造とは,表示された意思・観念が,作成名義人(#文書上作成者と認識される者)に帰属しない文書の作成。権限濫用事例は,作成名義人=作成者。
[山口『刑法各論』2版436頁,437頁-438頁参照]

◇偽造,虚偽文書作成
刑法226/ 1106/ 偽造とは,#権限なく他人名義の文書を作成すること(作成名義の冒用)。有形偽造とも呼ばれる。偽造により作出された文書を,偽造文書or不真正文書という。虚偽文書作成とは,#文書の作成権限を有する者が内容虚偽の文書を作成すること。無形偽造とも呼ばれる。これにより作出された文書を,虚偽文書という。
[山口『刑法各論』2版434頁参照]


2019年9月26日(その他1)
◇公法上の行為の代理権
民法146/ 1105/ #公法上の行為も私法上の取引の一環としてなされるときは,私法上の作用を看過できない。∴登記申請行為が(贈与という)私法上の契約の義務履行のためにされるときは,その権限を基本代理権として,表見代理(民法110条)成立しうる(判例)。but,#対外的に見て基本代理権授与とみられるかで帰責性を決すべき。
[内田『民法Ⅰ』4版194頁-195頁(最判昭46・6・3民集25-4-455)参照。
 司法書士あるいは実印等を預かり登記申請行為(公法上の行為)のみを依頼された者の場合,それらの者に対する不動産の譲渡という私法上の行為(売買,贈与)の一環としての契約義務履行行為ではないので,(対外的に見てそれらの者への基本代理権授与とみられるものではなく,)110条は適用されないということだろう。]


2019年9月25日(その他1)
◇敵対的買収の,会社経営に対する規律効果
商法153/ 1104/ 敵対的買収の脅威は,効率的株式会社制度維持に不可欠。∵#株主は取り分の約束がない代わりに_取締役選解任を通じ会社をコントロールする仕組みだが,合理的無関心な株主も多い。#株式が特定人に集中し_コントロール権が行使される可能性なければ_株主利益がないがしろにされ続け_株式投資されなくなる。
[『LEGAL QUEST会社法』3版440頁参照。]


2019年9月22日(その他1)
◇早すぎた結果の発生(早すぎた構成要件の実現)
刑法225/ 1103/ 当初の犯行計画で予定され,#密接な関係をもって行為者自身が行う一連一体の行為につき,そのいずれも行わず結果惹起を回避すべき法的要請を強く推し進める立場から,行為開始段階で現実的故意を認め,#当該行為自体に結果惹起意図なきものまで拡張し,いずれかの行為により惹起された結果に,故意犯肯定可。
[山口『刑法総論』3版234頁(最決平16・3・22刑集58-3-187,クロロホルム事件)参照]


2019年9月21日(その他2)
◇方法の錯誤
刑法224/ 1102/ #方法の錯誤:甲がAを狙い発砲したところ,Aの傍らにいたBに命中しB死亡。具体的符合説:#Aに対する殺人未遂罪とBに対する過失致死罪の観念的競合。法定的符合説:①Aに対する殺人未遂罪とBに対する殺人既遂罪の観念的競合。②後者に吸収。③現に発生したBに対する単一の殺人既遂罪のみ成立(他は,過失犯)。
[森圭司『ベーシック・ノート 刑法総論』新訂版(2005年)212頁参照。
・具体的符合説:平野,内藤謙等有力説。法定的符合説:①団藤,藤木,大谷,前田等通説,②福田平(①説と理論上同様だが,観点的競合ではなく,Aに対する殺人未遂罪は,後者の既遂罪に吸収される。),③大塚仁(1個の故意犯が成立し,その他の部分については過失犯を認める。本ケースにおいては,Aに対する過失致死罪の未遂が認められるが,不可罰。)。]

◇適法性の判断基準,錯誤
刑法223/ 1101/ 適法性判断は,#裁判所が法令解釈により客観的にすべき(客観説)。基準は法令。行為時状況を前提とし例えば,被疑者逮捕要件が備わっていれば,逮捕行為(職務執行)は適法であり,事後の裁判で無罪となっても,遡って逮捕行為が違法となるものではない。#適法性を基礎づける事実についてのみ,事実の錯誤肯定。
[山口『刑法各論』2版545頁-546頁(最決昭41・4・14判時449-64)参照]


2019年9月20日(その他3)
◇適法性の要否・要件
刑法222/ 1100/ #職務の執行は適法でなければならない(書かれざる構成要件)。∵違法な職務は保護に値しないし,違法な職務執行に対しては正当防衛すら可能だから。#適法性要件:①当該公務員の抽象的職務権限に属し,②当該職務執行に必要な前提条件が備わっており(具体的職務権限あり),③有効要件たる重要な方式の履践。
[山口『刑法各論』2版543頁=544頁(大判昭7・3・24刑集11-296)参照]

◇親族による犯罪に関する特例(刑法105条)
刑法221/ 1099/ 犯人蔵匿等罪(刑法103条)or証拠隠滅等罪(104条)では,犯人or逃走した者の親族(民法725条参照)がこれらの者の利益のために犯したときは,#刑を裁量的に免除可(105条)。#期待可能性の程度が低く_責任が減少すると認められるから。親族が犯人等の利益のために犯した場合,他人の利益も併せ図ったときも同様。
[山口『刑法各論』2版589頁-590頁(大判大8・4・17刑録25-568)参照]

◇賄賂
刑法220/ 1098/ 賄賂:#公務員の職務行為の対価として授受等される不正な利益(あっせん収受罪では,あっせんの対価としての不正な利益)。個別具体的な職務行為との間の対価関係までは不要。賄賂目的物は,財物に限らず,無形・有形を問わず,#人の需要・欲望を満たすに足る一切の利益含む。社交儀礼も,対価関係あれば賄賂。
[山口『刑法各論』2版619頁-620頁(最決昭33・9・30刑集12-13-3180,大判明43・12・19刑録16-2239,大判昭4・12・4刑集8-609,大判昭10・8・17刑集14-885等)参照]


2019年9月19日(その他1)
◇職務密接関連行為
刑法219/ 1097/ 公務員の本来の職務行為のみならず,#職務密接関連行為も職務行為に含まれる。①本来の職務行為と関連し慣行的に担当する行為や,前段階的・準備的行為など,②自己の職務に基づく影響力を利用して行う行為(同一権限ある公務員への働きかけ,権限の異なる公務員への働きかけ,非公務員への行政指導的行為)。
[山口『刑法各論』2版616頁-617頁参照]

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2019年8月ツイート16:その他(民訴法7;刑法9)
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