2019年11月(1日-23日)17ヶ:事案(憲法3,行政法1;民法2,商法1,要件事実1,民執法1,倒産法1;刑訴法2);その他(憲法3;民訴法1;刑法1)


2019年11月15日(事案1)
◇詐害行為否認の時期的要件
倒産法事案1/ A社は,平成20年に入ると資金繰りに窮するようになり,債務超過となり,6月には弁済猶予が必要となり,9月2回目の手形不渡りの5日後に当該売却行為をし,10日後に破産手続開始申立てをしているので,無資力(債務超過)要件をみたし,実質的危機時期,かつ,支払停止後における売却行為であり,#詐害行為にあたる。
[笠井正俊『倒産法演習ノート22問』2版第13問設問1 262頁-266頁(破160条1項1号2号)参照]


2019年11月10日(事案1)
☆再更正処分と訴えの利益
行政法事案20/ 青色申告法人Xがした106万円余の法人税確定申告に対し,税務署長Yが242万余として更正処分(第1次)したが,具体的理由記載なく,また金額誤記があったので,Xは審査請求手続後,取消訴訟提起。Yは,#X主張のとおり第2次更正処分した上で_具体的根拠を示し第1次と同額の更正処分(第3次)をした。訴えの利益如何?
[最判昭42・9・19民集21-7-1828『行政判例百選Ⅱ』6版179事件参照。
参考:最判昭38・5・31民集17-4-617『行政判例百選Ⅰ』6版〔127〕7版〔119〕]


2019年11月8日(その他3)
☆凶器の捜検(フリスク)
刑訴法事案19/ 深夜,強盗等犯罪多発地域警ら中の警察官Pらが,路地に佇んでいた甲と目が合うや,甲が慌てて走り出したので,停止を求め職務質問。シャツのへそ付近が不自然に膨らんでいたため質問したが,答えず立ち去ろうとした。Pの手が甲腹部に一瞬当たり,固い感覚があったので,#凶器等捜検のためシャツ上から触った。
[平成30年度司法試験予備試験 論文式試験 刑訴法Q1①参照。参考:寺崎嘉博『刑事訴訟法』3版95頁注8(#捜検:身体を外部から触れるにとどまる。所持品検査の一種。実務で使われる検索に相当。程度を超え,例えば内ポケットに手を入れたような場合,#捜索。),森圭司『ベーシック・ノート刑事訴訟法』新訂版(2006年)104頁]

☆米子銀行強盗事件
刑訴法事案18/ 猟銃,ナイフ所持の銀行強盗が600万円余を奪い逃走中の旨知った警察官K1は,某日,警察官K2らを指揮し緊急配備検問実施。手配人相風の男2人(X,Y)#の乗ったタクシーを停止させ職務質問したが,Xら黙秘。K1らは,座席上のバックの開披を求め,拒まれ続けたため,1時間半程後,#承諾なく_バックのチャックを開披。
[最判昭53・6・20刑集32-4-670『刑事訴訟法判例百選』10版4事件参照]

◇既判力の標準時
民訴法127/ 1146/ 判決対象たる権利または法律関係は,当事者の行為や時間の経過などとともに発生・変更・消滅するから,確定判決の基準時を明らかにする必要がある(既判力の標準時・基準時,時的限界)。#終局判決は事実審口頭弁論終結時までの訴訟資料に基づくので,その時点である(民訴法253条1項4号,民執法35条2項参照)。
[司法協会『民事訴訟法講義案』再訂補訂版278頁参照]


2019年11月5日(事案2,その他3)
◇規則と給付の二分論とパブリック・フォーラム論
憲法110/ 1145/ 政府は優れていないという理由のみで学術・芸術活動規制をすることは許されないが,#優れた学術・芸術活動に助成するが_そうでないものには助成しないという選択的給付は可能。but,#給付作用における観点に基づく助成決定は不可。政府による場所提供(給付作用)というパブリック・フォーラム論に通ずる。
[中村暁生『憲法論点教室』〔17〕(2012年)126頁-127頁参照。参考:木村『憲法の急所 権利論を組み立てる』2版143頁以下,小山『「憲法上の権利」の作法』新版195頁〔655,656〕]

◇観点規制と主題規制
憲法108/ 1143/ 「憲法9条を批判してはならない」等の特定の観点(viewpoint)に着目した規制は当然,表現内容規制。「防衛政策について議論してはならない」等の,主題(subject matter)に着目した規制も原則,表現内容規制。∵#その主題に関するすべての観点の市場への登場を等しく妨げる。共に思想の自由市場論に反する。
[安西ほか『憲法学読本』(2011年)142頁参照]

◇表現内容規制の違憲審査基準
109/ 1144/ 表現内容規制の合憲性は厳格審査(#命取りのテスト)され,#やむにやまれぬ政府利益という立法目的を追求するために必要最小限度の手段として厳密に設定されている場合のみ,合憲判断となる。より制限的でない他の選びうる手段がある場合,手段が目的達成のために規制すべき事項を規制していない場合,違憲。
[安西ほか『憲法学読本』(2011年)142頁。「より制限的でない他の選びうる手段」が『ある』場合(過剰包摂)はもちろん,...も,違憲となる,と書かれているが,『ない』の誤植ではないかと考えました。第2版が出ていれば,書店等で確認します。私が間違っていたらすみません。]

☆集会の自由の保障の中心とその周辺
憲法事案17/ 集会の自由は,#何らかのテーマに関する意見の表明・形成・交換を目的とする複数人の集まりの保障が中心。葬儀のような参加者による意見表明等を目的としない共同行為や,映画鑑賞のような共通目的はあるが,共同行為を意図してはいない複数人の集まりにまで及ぼしていくべきか? #二重の基準論との整合性?
[中村暁生『憲法論点教室』〔17〕(2012年)122頁(最判平7・3・7民集49-3-687(泉佐野市民会館事件),最判平8・3・15民集50-3-549(上尾市福祉会館事件))参照]

☆受遺者が遺言者死亡以前に死亡した場合の「相続させる」旨の遺言の効力
民法事案11/ A:亡夫の遺産の本件不動産につき共有持分権を有し,長男B,長女Xあり。A:平成18年9月死亡したが,3か月前にBは死亡していた。Bの子Y2らが代襲者。Aの本件遺言は,「#財産全部をBに相続させる」旨等の記載があったが,Xは失効を主張し,法定相続分持分の確認請求。#代襲者相続の意思ありとみるべき特段の事情?
[最判平23・2・22民集65-2-699『平成23年度 重要判例解説』〔民法14〕参照。「相続させる」旨の遺言について,1審のように遺産分割方法の指定と解すると,受遺相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合も,有効と解しうるかもしれないが,控訴審,最高裁はそう解さなかった。
参考:ダットサン『民法③』3版(2013年)299頁]


2019年11月4日(事案1;その他1)
☆裁判官のツイッターへの投稿と表現の自由
憲法事案16/ 判事Xは,平成30年5月,担当外の確定事件である犬の返還請求等に関する民事訴訟につき報道記事リンクを貼り,公園に放置された犬を保護し育てていたら,3か月くらい経って,飼い主が『返して下さい』「え? あなたこの犬を捨てたんでしょ?#3か月も放置しておきながら...」とツイッターに投稿。#裁判所法49条?
[最大決平30・10・17民集72-5-890『平成30年度 重要判例解説』〔憲法2〕参照。本決定は,#裁判官も一市民として表現の自由を有する旨判示しているが,表現の自由に対する委縮的効果を来さないように,「#品位を辱める行状」(裁判所法49条)の具体的基準を示すべきところ,それを欠く問題があるようである。]

◇公務執行妨害罪まとめ
刑法239/ 1142/ 職務執行の適法性要。∵#違法な職務は保護に値しない。適法要件:①当該公務員の抽象的職務権限内,②当該職務執行に必要な前提条件が備わっている(具体的職務権限),③重要な方式を履践し有効。#裁判所が行為の状況を前提として法令を解釈し客観的に判断。被疑者の行為が事後,無罪になっても適法のまま。
[http://right-droit.hatenablog.com/entry/2019/10/31/225255]

2019年11月3日(事案3)
☆国歌起立・斉唱拒否事件
憲法事案15/ Xは,A私立B小学校入学式で,国家斉唱等の職務命令に反し,地公法32条,33条違反で29条1項1号‐3号に基づき戒告処分された。これを違法として取消訴訟を提起する場合にいかなる主張をすべきか?
職務命令の処分審査・適用審査:#思想・良心の自由(憲法19条),表現の自由(21条),意に反する苦役からの自由(18条)?
[木村『憲法の急所 権利論を組み立てる』2版〔1〕105頁-111頁(最判平23・5・30民集65-4-1780),126頁参照]

☆売買代金支払請求(消滅時効の抗弁)
要件事実問題3/ XがYに対し土地の売買契約に基づき代金支払を求め,これに対し,Yは,売買契約締結に至らなかったと主張するとともに,仮に成立していたとしても,代金支払債務は既に消滅時効にかかっていると主張している。請求の趣旨:#被告は_原告に対し_2000万円を支払え。訴訟物:#売買契約に基づく代金支払請求権,1個。
[『新問題研究 要件事実』〔2〕19頁-20頁参照]

☆差押債権命令の申立書に請求債権として記載されなかった申立日翌日以降の遅延損害金
民執法事案1/ XはYに対する元金,支払済みまでの遅延損害金支払いを命ずる執行力ある確定判決正本に基づき,Y債務者,A(荒川区)第三債務者とする債権差押命令を申し立てた。#遅延損害金に申立日までの確定金額を記載させる東京地裁取扱いに従った。差押命令後支払われた取立金を,申立翌日以降の遅延損害金に充当可能か?
[最決平29・10・10民集71-8-1482『平成30年度 重要判例解説』〔民訴法4〕]


2019年11月2日(事案2)
☆財産引受けの無効主張と信義則
商法事案7/ X社は,昭34年新設Y社にP工場に属する一切の営業を譲渡する契約締結。Y社は,設立登記し,契約に基づく財産引渡しを受けたが,#原始定款に財産引受け記載なし(会社法28条2号)。Y社は昭42年頃事実上営業活動停止。X社は譲渡残代金支払いを求めたが,Y社は原始定款不記載などを理由に営業譲渡契約無効を主張。
[最判昭61・9・11判時1215-125『会社法判例百選』3版〔6〕事案参照]

☆転貸賃料債権への物上代位
総則物権事案9/ 抵当権者Cは,抵当不動産所有者Bの賃借人Aに対する賃料債権に物上代位きるが,Aが受け取る転貸賃料にも,物上代位できるか?
原則,民法372条準用の304条1項の「#債務者」に抵当不動産の賃借人は含まれないが,#所有者の取得すべき賃料を減少させ_or抵当権行使を妨げるため転貸借関係を作出した場合等_例外。
[田髙寛貴『事例から民法を考える』⑥(2014年)89頁(最決平12・4・14民集54-4-1552),84頁参照。例外として,所有者の取得すべき賃料を減少させ,または抵当権の行使を妨げるために,法人格を濫用し,または賃借権を仮装したうえで,転貸借関係を作出したものであるなど,抵当権不動産の賃借人を所有者と同視することを相当とする場合,転貸賃料債権に対して抵当権に基づく物上代位権を行使できるとする。]

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略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。⇒ならば,∴なので(したがって,よって,ゆえに),∵なぜならば,⇔これに対し(て),orまたは,butしかし(もっとも),exたとえば。
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2019年10月(9日-31日)ツイート15:事案(刑法8);その他(憲法1,行政法1;民法1,商法1,民訴法1,倒産法1;刑法1)
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