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原稿 · @right_droit4

25th Feb 2020 from TwitLonger

刑法Ⅴ①共犯の因果性(10ヶ)


◇共犯の基礎理論
刑法20/ 247/ 他の共犯者の行為に加担し,他人の行為を通じ,法益侵害結果発生に心理的・物理的因果性を及ぼしたことが共犯処罰根拠である。共犯も間接的にせよ,自ら因果的に引き起こした事態に,その限度でのみ責任を負う(個人責任原理に服する)。なお,ここにいう因果性は #促進的因果関係で足り,条件関係までは不要。
[『判例プラクティス刑法Ⅰ総論』〔374〕(東京高判昭 25・9・14高刑集3-3-407)395頁参照]

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◇犯罪の遂行形態
[・単独犯・共同正犯は、正犯を前提としない非従属的な遂行形態という意味で、一次的責任類型(正犯)である。それに対し、正犯の存在を前提とする従属的な関与形態である教唆・幇助は、責任追及の点で比喩的にいえば、一次的責任類型の背後に位置する、派生的・従属的な二次的責任の類型である。
もっとも、共同正犯も、自らの行為単独で犯罪構成要件を充たさなくても処罰の対象となる点で、教唆・幇助と共通である。この意味では、共同正犯も処罰の拡張形態であり、刑法 60 条は、確認規定にとどまるものではない。共同正犯の正犯性は、単独正犯の正犯性よりも拡張されているのである。このように考えると、共同正犯はあくまでも共犯の一種であり、犯罪遂行における関与形態のあり方とその重要性が考慮され、一次的責任類型である正犯としての評価を受けていると理解すべきである。]

刑法68/ 587/ 単独犯・共同正犯は正犯を前提としない非従属的遂行形態,#一次的責任類型
(正犯)。正犯の存在が前提の従属的関与形態たる教唆・幇助は,#派生的従属的な二次的責任類型。
共同正犯も,自ら単独で構成要件を充たさずとも処罰対象となる点,教唆・幇助と共通。処罰拡張形態(刑法60条)。#あくまで共犯の一種。
[山口『刑法総論』3版307頁-308頁参照。共同正犯は一次的責任類型(正犯)だが,処罰拡張形
態である点,教唆・幇助と共通する,共犯の一種。]

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◇因果共犯論
[・共犯の処罰根拠は、正犯の行為を介して法益侵害(構成要件該当事実)を自ら惹起したことにある(因果共犯論=惹起説)。このような理解によれば、法益侵害の直接惹起が単独犯(正犯)であり、正犯行為を介した間接惹起が共犯(教唆・幇助)と理解され、正犯と共犯の差異は、法益侵害の態様の差にあることになる。これに対し、共同正犯は法益侵害の共同惹起と解される。このような理解から、共同正犯における一部行為の全部責任が導かれる。(結局、因果共犯論(惹起説)は、構成要件レベルの連帯(法益侵害の共同惹起)ということかな(違法性が、共同正犯者間で格別に阻却される場合がありうるということだろうか?)。)]

刑法69/ 588/ 共犯処罰根拠は,正犯行為を介して法益侵害(構成要件該当事実)を自ら惹起したことにある(因果共犯論=惹起説)。法益侵害の直接惹起が単独犯(正犯),正犯行為を介した間接惹起が共犯(教唆・幇助),正犯と共犯の差異は法益侵害態様の差。#共同正犯は法益侵害の共同惹起であり,一部行為の全部責任が導かれる。
[山口『刑法総論』3版310頁-311頁参照。因果共犯論(結局因果共犯論は,構成要件レベルにおける連帯(法益侵害の共同惹起)と捉えればよいか?⇔違法共犯論,責任共犯論)。
 ただ、混合惹起説(山口前掲314頁以下)では,構成要件該当性(TB)と違法性(Rw)を正犯が備えていなければ,共犯構成要件(共犯のTB)が認められない(同書315頁)という。(まだ,私の理解不十分)]

◇共犯の因果性
刑法128/ 864/ 共犯の処罰根拠は,#共犯行為が構成要件的結果を惹起したことにある。教唆・幇助では,#正犯行為を介したTB的結果惹起を要し_教唆・幇助行為とTB的結果との間に因果関係必要。共同正犯でも,#自らの因果的寄与と他の共同者の行為を介した因果的寄与とを併せ_共同正犯行為とTB的結果との間に因果関係必要。
[山口『刑法総論』3版319頁参照]

◇教唆犯の因果性の前提としての結果回避義務
刑法137/ 876/ 教唆は,故意のない者に犯意を生じさせることが必須要件なので,#教唆者には正犯に犯意を生じさせない義務があり_これに違反しなければ正犯は犯意を抱くことがなく_したがって犯行に至らず構成要件的結果は発生しなかったであろうという結果回避可能性を前提とする。このような回避義務は,単独犯と同様。
[山口『刑法総論』3版324頁(教唆犯の因果性の前提としての結果回避予見可能性)参照]

◇被害者の行為の介入(夜間潜水事件)
刑法138/ 877/ 直接原因の被害者行為が不適切な場合も,予測できる範囲ならば,当初の行為者の行為に被害者の不適切な行為をもたらす危険性があり,それが結果へ現実化したといい得る。夜間潜水事件:#被告人の行動は被害者を溺死させる危険を引き起こしかねない危険性あり_被害者らの行動は被告人の行動から誘発された。
[山口『刑法総論』3版63頁(最平4・12・17刑集46-9-683,間接型(山口同書61頁LL10))参照]

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〇狭義の共犯の因果関係の内容
刑法判例17/ 共犯構成要件の因果関係を肯定するためには,教唆・幇助行為における正犯実行行為を惹起・促進する危険性が現実化し,正犯実行行為が実際,惹起・促進されたこと要。銃声の音漏れ防止のため地下室に目張りしたが,殺人は行われず,正犯に認識されてもなければ,殺人幇助とならない(東京高判平 2・2・21参照)。
[山口『刑法総論』3 版 322 頁(判タ 733-232)参照]

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◇共犯行為の危険性
[・共犯行為の危険性は、実行行為を惹起・促進する客観的な危険性である必要がある。正犯がそれを実行行為に利用する可能性が考えられないではないという程度では足りない。
このことは、業務行為として一般的になされる行為が結果として正犯の実行行為に利用された場合(中立的行為による幇助)に問題となる。
たとえば、刃物を商っている業者が刃物を販売し、それを購入した者がその刃物を用いて殺人・傷害を犯した場合、販売した刃物が結果として犯行に役立ったとしても、販売業者が殺人罪・傷害罪の幇助で処罰されることはない。犯行の具体的な契機の存在がなければ、実行行為を惹起・促進する客観的な危険性が認められないからであり、また、幇助犯の危険性の認識も故意犯たる幇助の要件であり、そのような具体的な契機(客観的な危険性)の認識も要求されるからである。
適法な用途にも著作権侵害の用途にも利用できるファイルが著作権侵害行為に利用された場合も、ソフトの提供行為について、一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況がなければ、実行行為を惹起・促進する客観的な危険性は認められず、また、そのことの認識もなければ、幇助犯は成立しない。

刑法56/ 488/ 共犯行為の危険性は,#実行行為を惹起・促進する客観的危険性である必要あり。正犯がそれを実行行為に利用する可能性が考えられないではないという程度では足りない。
#犯行の具体的契機の存在や_一般的可能性を超える具体的侵害利用状況がなければ,客観的危険性は認められない(中立的行為による幇助)。
[山口『刑法総論』3版321頁-322頁(最判平23・12・19 刑集65-9-1380(Winny事件)。前半,
法的判断枠組み。後半,事実の分析・評価例。)]

〇中立的行為による幇助(因果関係の内容)
刑法判例16/ 最決平23・12・19参照:適法な用途にも著作権侵害用途にも利用できるファイル共有ソフトを,インターネットを通じ公開・適用し,著作権侵害行為に利用された事案:#かかるソフト提供行為につき幇助犯が成立するためには_一般的可能性を超える具体的な侵害利用状況と_提供者においてそのことの認識_認容要。
[山口『刑法総論』3 版 322 頁(刑集65-9-1380,Winny事件)参照]

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◇共同正犯の因果性
刑法244/ 1151/ 刑法60条は,正犯拡張規定で,共同行為とTB該当事実間の因果性(処罰根拠論)に基づく。#この因果性は_単独正犯と比べ_条件関係_結果回避可能性不要という点で,拡張されている。
ABが被害者を狙い,殺人意思を通じ,同時に拳銃発射,A銃弾で被害者死亡,B銃弾外れた場合,B行為と被害者死亡間に条件関係等なし。
[山口『クローズアップ刑法総論』(2003年)第6講240頁参照]

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略号: ☆問題,〇判例,◇その他。R論文,Q設問,T短答。⇒ならば,∴なので(したがって,よって,ゆえに),∵なぜならば,⇔これに対し(て),orまたは,butしかし(もっとも),exたとえば。TB構成要件,Rw違法性(違法),S責任(有責性)
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